アライア制作の日々と木からの学び

今年に入ってからランニングを習慣にしている。

これには理由があり「アライア」という、波乗りの原点と言われる乗り物にトライするためだ。

簡単に言えば「アライア」とはデブには決して乗ることができないフィンが付いていない木製の波乗り道具で、古代ハワイアンにも愛されたサーフィンの原点ともいうべき代物だ。

アライアとの出会いは、2009年に封切りとなったサーフィンムービー「The Present」。

デイブ・ラストヴィッチ、ダン・マロイ、クリス・デルモロがフィンのない薄っぺらい木の板でワイメアベイの波に乗る映像は衝撃的だった。

The Presentの監督は、木製サーフボードを作るきっかけにもなったSproutの監督「トーマス キャンベル」の作品ということもあり、私も出た瞬間にDVDを購入した記憶がある。

当時のサーフィン雑誌もアライアの特集を組み、日本でも一部のサーファーを中心にサーフィンの原点に回帰しようというムーブメントが起こった。

アライアは、木製サーフボードとは違い厚みも薄く一見作りやすそうだったので自作してみることにした。

The Presentの封切り直後の2009年の頃だったと思う。

我が家は山林を所有していることもあり、ラッキーなことに父が購入した自動カンナや丸鋸等の木工機械が揃っていた。

また、更にラッキーなことに祖父が自宅裏山に植え、父が伐採し地元の製材所に持ち込んで加工された厚み18mm程度の桐の板材が土蔵に保管してあった。

これを使わない手はないということで、あらゆるホームページ検索しアライアの作り方を学んでいった。

ハイエースのカスタム以降、木工沼に入りかけてたとはいえアライアの制作は困難を極めた。

まず手元にある桐の板の厚みが18mmしかない。幅も100〜200mmとバラバラ、しかもところどころに節がある。

これらの材料からアライアの幅400〜500mmを取るためには、節を交わし長手方向にカットした板を縦方向に接ぐ必要があったが、丸鋸を使った直接カットがまず思い通りにできない。

自作した丸鋸直線カットジグを使っても断面が直角でなかったり、まっすぐにカットできてもしてしばらく放置していたら板が歪んできたりと板接ぎ前の加工が精度がなかなかでないのだ。

思わずホームセンターで売っている桐の集成材にも飛びつきたくなったが、これらの桐は中国からはるばるやってきたもの。

しかも製材過程で人工乾燥され化学薬品により漂白処理がされた後、非耐水性のボンドで接着されている。

このようなエコフレンドリーとは言えない桐を使っても何もおもしくない。

だからこそ、裏山の桐を形にしてやろうと思ったわけだ。

試行錯誤の末、何とか手元にある桐の材料から4本のアライアが出来上がった。

2009年、自宅裏山の桐の木で制作した4本のアライア
自宅裏山の桐の木で制作した4本のアライア (2009年)

しかしながら、基の厚みが18mm、ボトム面にコンケーブなんていれたりすると更に板は薄くなり、実際に海に持っていきトライしてみると、テイクオフした瞬間から板が沈みこみ、雑誌で見たようなライディングが不可能なことを悟った。

当時はそれなりに体重も絞れてて自信があったのに、サーフィンのスキルがまだまだ浅かったのだと思う。

ただ、ボードの上に立てはしなかったものの、腹ばいで驚くほど早いスピードで波に乗ることができたのは驚きだった。

また制作過程において、木の繊維には方向があり、板の上下、内側外側でカンナを入れる方向が決まっていることを学んだ。

あれから10年。アライアは無理と諦め、木製サーフボードづくりを進めてきた。

また当時、厚みのある桐の板を求め、石川県内の製材所、森林組合に相談し、やっと見つけた河北郡津幡町倉見地区の桐の丸太を製材し、自宅裏山で桟積みし、アク抜き、自然乾燥した木も一部腐りかけて来た。

裏山から自宅の土蔵横に移した製材済みの桐

ようやく体重も減ったし、サーフィンのスキルも多分上達しているはずである。

そこで、10前に購入し製材した桐で、改良したアライアも制作することにした。

毎年この時期の日本海側は湖のように静まり返るが、良い波が立ち次第、再びアライアにチャレンジしてみようと思っている。

最近作成したアライア 6’6″(左)、10年前に作成したアライア 5’7″(右)